「Qwenってよく聞くけど、モデルが多すぎて何が何だかわからない」——そんな声をよく耳にします。本記事では、Qwenの概要・ライセンス・モデルファミリーの全体像をわかりやすく整理します。

Qwenとは

Qwen(クウェン)は、中国テック大手 Alibaba Cloud(アリババクラウド) が開発・公開する大規模AIモデルのファミリー総称です。正式名称は 通義千問(Tōngyì Qiānwèn)。「千(Qian)=千」と「問(Wen)=問い」を組み合わせた名前で、「無数の問いに答える」という意味を持っています。

2023年4月に最初のモデルが公開され、現在はテキスト生成・画像理解・音声・コード・画像生成と、モダリティをまたいだ多数のモデルが展開されています。多くのモデルがオープンウェイト(重みを公開)で提供されており、ローカル実行やファインチューニングが可能な点が大きな特徴です。


ライセンスについて

Qwenのライセンスは モデルによって異なります ので、利用前に必ず確認するようにしましょう。主な区分は以下のとおりです。

ライセンス種別 主な対象モデル 商用利用
Apache 2.0 Qwen3シリーズ全般、Qwen-Imageなど ✅ 可(条件あり)
Qwen License(ソース公開型独自ライセンス) Qwen2.5の一部(72Bなど大型モデル) ⚠️ 月間アクティブユーザー1億人超の場合は要申請
Qwen Research License(非商用) 一部の小型モデル(旧世代) ❌ 研究目的のみ
プロプライエタリ Qwen-Max、Qwen3.7-Maxなど API提供モデル APIを通じた利用のみ

重要ポイント: Qwen3以降のオープンモデルは基本的にApache 2.0が適用されており、商用利用しやすい環境が整っています。ただし、各モデルのHugging FaceページでLICENSEファイルを必ず確認するようにしてください。

「Qwenはモデル重み(weights)はかなり公開されているけれど、学習パイプライン全体が完全公開されているわけではない」です。

多くの人が「オープンソース」と言っていますが、厳密には「オープンウェイト(open-weight)」に近いケースが多いです。Qwenでは次のようなものは公開されていることがあります。

  • 推論コード(inference)
  • ファインチューニング用コード
  • 一部の学習・評価スクリプト
  • モデル重み(checkpoint)
  • 技術レポートや学習方針

一方で、次の部分は一般に全部は出ていません。

  • 学習に使った完全なデータセット
  • データ収集・フィルタリング工程
  • データの重み付けやクリーニング詳細
  • 大規模事前学習の完全再現コード
  • RL(強化学習)やアライメント工程の詳細
  • 学習時のハイパーパラメータや内部ノウハウ全部

特に「同じデータ・同じコード・同じ設定でQwenをゼロから完全再現できるか?」という意味なら、答えは「基本的に無理」です。公開されていない部分が残っています。Qwenはオープンと言われる一方、完全なAIオープンソース定義(データ・コード・手順を含む)を満たしていないという指摘もあります。

比較すると、こんなイメージです。

  • Qwen → 重みは広く公開、訓練の全レシピは非公開部分あり
  • MetaLlama → かなり近い(オープンウェイト寄り)
  • OpenAIのGPT系 → 重みも学習コードも非公開
  • 一部の研究プロジェクト(完全再現重視) → データ・コード・重み全部公開する場合もある

AI界では「オープンソース」という言葉がソフトウェアの意味とずれて使われることが多くて、「重み公開=オープンソース」と呼ぶ人と、「学習レシピまで全部出して初めてオープンソース」と考える人で意見が分かれています。Qwenはその議論の中心にいるモデルの一つです。


Qwenファミリー全体マップ

Qwenのモデル群は大きく ①テキストLLM系②マルチモーダル系③特化型④画像生成系 の4系統に整理できます。


① テキストLLM系(主力ライン)

Qwen1 → Qwen2 → Qwen2.5(2023〜2024年)

基礎を築いた世代です。Qwen2.5では0.5B〜72Bまで7サイズが揃い、多言語・長文脈性能が大きく向上しました。

モデル サイズ HuggingFace
Qwen2.5(コレクション) 0.5B〜72B コレクションページ
Qwen2.5-7B-Instruct 7B Qwen/Qwen2.5-7B-Instruct
Qwen2.5-72B-Instruct 72B Qwen/Qwen2.5-72B-Instruct

Qwen3(2025年4月〜)

現行の主力世代です。Thinking(思考)モードとNon-Thinkingモードを1モデルで切り替え可能という大きな特徴を持っています。Dense(通常)モデルとMoE(Mixture-of-Experts)モデルの両方が存在し、119言語・36兆トークンで学習されています。

モデル 種別 パラメータ HuggingFace
Qwen3-0.6B Dense 0.6B Qwen/Qwen3-0.6B
Qwen3-1.7B Dense 1.7B Qwen/Qwen3-1.7B
Qwen3-4B Dense 4B Qwen/Qwen3-4B
Qwen3-8B Dense 8B Qwen/Qwen3-8B
Qwen3-14B Dense 14B Qwen/Qwen3-14B
Qwen3-32B Dense 32B Qwen/Qwen3-32B
Qwen3-30B-A3B MoE 30B(実稼働3B) Qwen/Qwen3-30B-A3B
Qwen3-235B-A22B MoE 235B(実稼働22B) Qwen/Qwen3-235B-A22B

💡 MoEとは? Mixture-of-Expertsの略です。総パラメータ数は多いですが、推論時は一部のパラメータ(Activated)しか使わないため、コスト効率が高いという特徴があります。

Qwen3.5(2026年2月〜)

Qwen3世代の発展形です。マルチモーダルトークンでの早期融合学習を採用し、テキスト・画像両方を扱うUnified VLモデルとして進化しています。ハイブリッドアーキテクチャで高スループット推論を実現しています。

モデル HuggingFace
Qwen3.5(コレクション) コレクションページ
Qwen3.5-2B Qwen/Qwen3.5-2B
Qwen3.5-4B Qwen/Qwen3.5-4B

② マルチモーダル系(視覚・音声)

Qwen2.5-VL(ビジョン言語モデル)

画像・動画を理解するモデルです。動的解像度処理・ウィンドウアテンションを採用し、OCR・文書解析・長時間動画の分析に対応しています。GPT-4oやClaude 3.5 Sonnetと競合する性能をベンチマークで示しています。

モデル HuggingFace
Qwen2.5-VL-7B-Instruct Qwen/Qwen2.5-VL-7B-Instruct
Qwen2.5-VL-72B-Instruct Qwen/Qwen2.5-VL-72B-Instruct
QVQ-72B(視覚的推論特化) Qwen/QVQ-72B-Preview

Qwen3-VL(2025年10月〜)

Qwen3世代のビジョン言語モデルです。後述のQwen-Image 2.0のエンコーダとしても採用されており、LLM系とImage系の橋渡し役を担っています。

モデル HuggingFace
Qwen3-VL-7B-Instruct Qwen/Qwen3-VL-7B-Instruct
Qwen3-VL-72B-Instruct Qwen/Qwen3-VL-72B-Instruct

Qwen2.5-Omni(全モダリティ対応)

テキスト・画像・動画・音声を入力でき、テキストと音声を出力できるオールインワンモデルです。「Thinker–Talker」アーキテクチャを採用しており、LLM(Thinker)と音声デコーダ(Talker)が連携してリアルタイム音声会話を実現します。

モデル HuggingFace
Qwen2.5-Omni-7B Qwen/Qwen2.5-Omni-7B

Qwen2-Audio(音声理解)

音声を直接入力として理解・応答するモデルです。音声認識・音声QA・感情理解に対応しています。

モデル HuggingFace
Qwen2-Audio-7B-Instruct Qwen/Qwen2-Audio-7B-Instruct

③ 特化型モデル

Qwen2.5-Coder(コード生成)

コード特化モデルです。多言語プログラミングに対応しており、コード補完・デバッグ・コード説明に強みを持っています。

モデル HuggingFace
Qwen2.5-Coder-7B-Instruct Qwen/Qwen2.5-Coder-7B-Instruct
Qwen2.5-Coder-32B-Instruct Qwen/Qwen2.5-Coder-32B-Instruct

Qwen2.5-Math(数学推論)

数学問題に特化したモデルです。競技数学レベルの問題にも対応しています。

モデル HuggingFace
Qwen2.5-Math-7B-Instruct Qwen/Qwen2.5-Math-7B-Instruct
Qwen2.5-Math-72B-Instruct Qwen/Qwen2.5-Math-72B-Instruct

QwQ(ステップバイステップ推論)

複雑な問題に対して「考えながら解く」スタイルの推論モデルです。Chain-of-Thoughtを深く活用し、数学・科学・論理問題に強みを持っています。

モデル HuggingFace
QwQ-32B Qwen/QwQ-32B

Qwen2.5-1M(超長文脈)

コンテキストウィンドウが最大100万トークンに対応する長文脈特化モデルです。スパースアテンションやウィンドウ並列推論などの技術によって実現されています。

モデル HuggingFace
Qwen2.5-7B-Instruct-1M Qwen/Qwen2.5-7B-Instruct-1M
Qwen2.5-72B-Instruct-1M Qwen/Qwen2.5-72B-Instruct-1M

Qwen3-Embedding(埋め込みモデル)

テキストをベクトルに変換するEmbeddingモデルです。RAG(検索拡張生成)システムの構築などに広く活用されています。

モデル HuggingFace
Qwen3-Embedding Qwen/Qwen3-Embedding

④ 画像生成系(LLM系とは別系統)

Qwenの画像生成モデルは、テキストLLM系とは独立した別系統として開発されています。ただし、内部では同世代のVLモデルをエンコーダとして活用しており、LLM系の進化に追随する形で更新されています。

Qwen-Image(テキスト→画像生成)

2025年8月に登場したモデルです。特に中国語・英語テキストの画像内描画(文字を正確に生成する能力)に強みを持っています。スタイル転送・オブジェクト挿入・テキスト編集・ポーズ操作など高度な編集操作にも対応しています。

モデル HuggingFace
Qwen-Image Qwen/Qwen-Image
Qwen-Image-2512(2025年12月改良版) Qwen/Qwen-Image-2512

Qwen-Image-Edit(画像編集特化)

入力画像をQwen2.5-VL(意味理解)とVAE(外観情報)の2経路で並行処理するデュアルパスアーキテクチャが特徴です。画像の意味を保ちながら外観を精密に編集できます。

モデル HuggingFace
Qwen-Image-Edit Qwen/Qwen-Image-Edit

Qwen-Image 2.0(2026年2月〜)

現行の最新画像生成モデルです。Qwen3-VL(8B)をエンコーダに採用し、拡散デコーダ(7B)と組み合わせた構成になっています。パラメータを20B→7Bに削減しながら性能は向上という効率化も実現しました。生成と編集が1モデルで統合されており、AI Arena(ブラインド人間評価)では生成・編集の両カテゴリで1位を獲得しています。

特徴 詳細
解像度 ネイティブ2048×2048
プロンプト長 最大1,000トークン
パラメータ 7B(前世代の20Bから大幅削減)
対応言語 日本語・中国語・英語など多言語テキスト描画

※ Qwen-Image 2.0のオープンウェイト公開状況は変動することがあります。Qwen公式HuggingFaceページで最新状況をご確認ください。


Alibabaが展開するQwenサービス

Alibabaはモデルの公開にとどまらず、サービスとしても積極的に展開しています。

サービス 概要 対象
Qwen Studio(chat.qwen.ai) チャット・画像生成・動画理解・Web検索・アーティファクト生成を統合したAIアシスタントです。Claude.aiのAlibaba版にあたるサービスです 一般ユーザー
DashScope API OpenAI互換エンドポイントでQwenモデルをAPI利用できる開発者向けプラットフォームです 開発者・企業
Tongyi DeepResearch Qwen3-30B-A3B上に構築された調査エージェントです。複雑な情報収集タスクを自律的に実行します リサーチ・ビジネス
Taobao × Qwen タオバオのショッピング体験にQwenエージェントを全面統合しています。商品提案・購入補助を自律実行します ECユーザー
Qwen-Agent / AgentScope ツール利用・マルチエージェント構築のためのOSSフレームワークです 開発者

ファミリー全体の俯瞰図

Qwenファミリー(Alibaba Cloud)
│
├── 【テキストLLM】
│   ├── Qwen1 / Qwen1.5 / Qwen2(旧世代)
│   ├── Qwen2.5(0.5B〜72B)
│   ├── Qwen3(0.6B〜235B、Thinking/Non-Thinkingモード)
│   └── Qwen3.5(マルチモーダル統合、2026年〜)
│
├── 【マルチモーダル(視覚・音声)】
│   ├── Qwen2.5-VL / Qwen3-VL(画像・動画理解)
│   ├── Qwen2.5-Omni(テキスト+画像+音声 入出力)
│   ├── Qwen2-Audio(音声理解)
│   └── QVQ(視覚的推論特化)
│
├── 【特化型】
│   ├── Qwen2.5-Coder(コード生成)
│   ├── Qwen2.5-Math(数学推論)
│   ├── QwQ(ステップ推論)
│   ├── Qwen2.5-1M(超長文脈)
│   └── Qwen3-Embedding(ベクトル変換)
│
└── 【画像生成(別系統)】
    ├── Qwen-Image → Qwen-Image-2512
    ├── Qwen-Image-Edit → Qwen-Image-Edit-2511
    ├── Qwen-Image-Layered(レイヤー編集)
    └── Qwen-Image 2.0(Qwen3-VL採用、生成+編集統合)

まとめ

Qwenは「1つのモデル」ではなく、Alibaba Cloudが継続的に展開するAIモデルのエコシステム全体です。テキストLLMから画像生成まで幅広くカバーしており、その多くがApache 2.0ライセンスでオープン公開されています。

モデル数の多さに圧倒されがちですが、整理するとテキスト系(Qwen3が主力)/マルチモーダル系(VL・Omni)/特化型(Coder・Math・QwQ)/画像生成系(Qwen-Image 2.0)の4系統に分類できます。画像生成系はLLM系とは独立した系統ですが、内部的にはVLモデルをエンコーダとして活用しており、世代ごとに連動して進化しています。

モデルを使う際はHuggingFaceの各モデルページでライセンスを確認し、用途に応じた系統を選ぶのが近道です。

Qwen公式HuggingFaceページ: https://huggingface.co/Qwen

Qwen公式サービス: https://qwen.ai/

Qwen公式GitHub: https://github.com/QwenLM